2026年3月19日・20日、京都で「IDEAL-TR International Meeting」を開催しました。19日の歓迎夕食会に続き、20日は特別講演と症例検討を行い、国内外の専門家と直腸がん治療について議論を重ねました。
今回の会議で私たちが目指したのは、「がんを治すこと」と「直腸やその機能を守ること」を両立するために、治療後の評価をより確かなものにすることです。世界の仲間と同じ症例を見ながら、これからの診療につながる課題を考える、貴重な機会となりました。
直腸を残せる可能性を、より確かな判断につなげる
直腸がんでは、手術前に抗がん剤治療と放射線治療を組み合わせる「TNT」という治療が行われています。治療によってがんが十分に消失したと判断される患者さんでは、直腸を切除せず、厳密に経過をみる「臓器温存」が選択肢になる場合があります。一方、がんが消えたように見えても、その後に再び大きくなることがあり、治療効果を慎重に見極める必要があります。
「本当にがんが消えているのか」「直腸を残す選択ができるのか」。
この重要な判断を、より客観的に行えるようにすることが、私たちの進める国際共同研究「IDEAL-TR」の目標です。内視鏡やMRIの所見を各国の専門家が評価し、世界で共有できる治療後の評価基準づくりを目指しています。
世界の専門家と、同じ症例を囲んで
今回は、ブラジルから Rodrigo Oliva Perez先生、ドイツから Emmanouil Fokas先生、米国から J. Joshua Smith先生をお迎えしました。外科医だけでなく、内視鏡医、放射線診断医、腫瘍内科医など、計45名が参加しました。
午前の講演では、Perez先生からは臓器温存を見据えた治療の負担軽減、Fokas先生からは分子情報に基づく治療の最適化や高齢者への小線源治療、Smith先生からは治療効果を高めるための治療強化についてお話しいただきました。治療を強める方向だけでなく、適切に負担を減らす方向も含め、一人ひとりに合った治療を考える内容でした。
午後は、実際の7症例について内視鏡画像やMRIを確認しながら、治療効果をどのように判定するかを検討しました。同じ画像を前に、それぞれの専門家が判断の根拠を共有することで、国や専門領域による評価の違い、今後整理すべき課題が明らかになりました。
大切なのは、ただ結論をそろえることではなく、「なぜ、そう判断するのか」を共有することだと感じます。講演を聴くだけでは得られない、対面で症例を一緒に考えることの価値を実感しました。
会議室を出れば、大阪・京都をご案内
前日の歓迎夕食会は、京都の「FORTUNE GARDEN KYOTO」で行いました。研究の議論に先立ち、皆さんを京都にお迎えする時間となりました。
会議の前後には、先生方と大阪城や京都の街並み、竹林も訪れました。
講演中の真剣な表情とはまた違う、リラックスした笑顔。写真を見返すと、充実した議論とともに、こうした交流の時間も大切な思い出になっていると感じます。
国際共同研究を育てるのは、データや論文だけではありません。一緒に歩き、食事をし、顔を合わせて話す。そうして築く信頼関係も、これから長く研究を続けていくための大切な土台だと思います。
京都での議論を、患者さんのよりよい選択へ
私たちが目指しているのは、単に「手術をしないこと」ではありません。がんを治すことを大切にしながら、直腸やその機能を守れる患者さんを、より正確に見極めることです。そのための共通基準をつくり、患者さんに還元していくことが、この研究の目標です。
ご参加いただいた先生方、準備・運営にご尽力いただいた皆さま、そして本会の開催をご支援いただいた公益財団法人小林がん学術振興会に、心より御礼申し上げます。
世界の知恵を、一人ひとりの患者さんへ。
これからも大阪国際がんセンターから、国内外の仲間とともに、がんの治療と治療後の暮らしを支える取り組みを進めてまいります。